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Ikena Oncology が当社EP4 拮抗薬grapiprant によるマイクロサテライト安定性の大腸がん患者を対象とする 治験の結果を2022 年欧州腫瘍学会免疫腫瘍学会議において発表しました

2023/01/11

Ikena Oncology(Ikena 社)は、当社EP4 拮抗薬grapiprant (AAT-007, IK-007)によるマイクロサテライト安定性の大腸がん患者を対象とする治験を実施し、その臨床データを2022 年欧州臨床腫瘍学会免疫腫瘍学会議において発表しました。発表の概要は以下のとおりですが、以下リンク先にあります英文学会要旨の内容が優先されます。

 

161P: A Phase 1b Study to Evaluate IK-007 in combination with Pembrolizumab (pembro) in Patients with Advanced Microsatellite Stable (MSS) Colorectal Cancer (CRC))

https://cslide.ctimeetingtech.com/immuno22hybrid/attendee/confcal/session/calendar?q=161P

 

 

試験方法

本試験は、2 次化学療法以降の治療を受けた切除不可能なマイクロサテライト安定性の大腸がん患者を対象に、IK-007 とペムブロリズマブの併用効果をみる第1b 相試験です。第1 群はIK-007 単剤を7 日間投与後、IK-007 とペムブロリズマブの併用投与(200mg を3 週間ごとに点滴静注)を行い、第2 群は併用投与のみを行いました。安全性、抗腫瘍活性、薬物動態、薬力学、第2 相試験推奨用量などの検証をエンドポイントとしました。

 

結果

第1 群26 名、第2 群28 名を登録し、4 段階の用量(300、450、600、900mg、1 日2 回経口)のIK-007 が投与されました。この中には、治療前尿中PGEM(PGE2 代謝物)濃度が高い患者12 名が含まれます。治療の奏効率は5.3%(2/39 有効性評価対象患者)であり、完全奏効した1 例(300mg 1 日2 回)は18 ヵ月以上の奏効期間を示しました。部分奏効の1例(900mg 12 時間毎)は4 ヵ月以上の奏効期間を認め継続して治療を行っています。病勢コントロール率は28%(11/39)、⾧期の臨床的有用性を認めた5 名の患者を対象とした奏効期間の中央値は8.3 カ月でした。腎機能低下、肝毒性、上部消化管潰瘍などの有害事象を認め、グレード2 以上の治療と関連した有害事象は26 例(48%)が報告されました。そのうち、AST の上昇が5 名(9.3%)に認められました。重篤な有害事象は23 例(43%)で報告され、腸閉塞、気胸、急性腎障害が含まれました。

 

結論

マイクロサテライト安定性の大腸がん患者においてIK-007 とペムブロリズマブの併用治療は、限られた頻度ではあるが完全奏効の症例を含む強い抗腫瘍活性を示すことを確認し、また忍容性を確認しました。治療有効性と治療前尿中PGEM 濃度の相関の有無は、結論には至りませんでした。注目すべきは、IK-007 とペムブロリズマブの併用治療により28%の患者において病勢コントロールに成功し、その多くが臨床的有用性を⾧期にわたって示したことです。現在進行中の炎症性乳がんを対象としたIK-007 の医師主導治験を含め、マイクロサテライト安定性の大腸がん以外のがんに対する試験の実施が望まれます。

 

本試験の結果についての当社の見解を以下に記載します。

 

●マイクロサテライト安定性の大腸がん患者に対する抗PD-1 抗体単剤の治療効果は現在認められていませんが、本試験では頻度は高くないもののgrapiprant との併用により完全奏効を含む治療効果が確認できました。
●本試験で併用治療に反応した患者のどのような病態背景が治療効果と相関するかを検討し、本治療の効果が期待できる患者に絞った治療が可能となれば、奏効率の高い治療の実現につながる可能性があると考えます。
●EP4 拮抗薬のがん免疫治療における作用メカニズムは、がん細胞の機能により抑制された免疫細胞の機能の回復にあると考えており(1)、マイクロサテライト安定性の大腸がんのみならず他のがん種での治験実施が望まれます。
● 治療有効性と治療前尿中PGEM 濃度の相関について、本試験で完全奏効、部分奏効を確認した患者はいずれも高い尿中PGEM 濃度を認めたことから何らかの関連があると推測していますが、本試験では統計学的な判断を可能とするための十分なサンプル数がなかったために結論が得られなかったと理解しています。
●本試験では切除不能のマイクロサテライト安定性の大腸がん患者での最大900mg を1 日2 回毎日投与した際の忍容性が確認できました。

 

1. Prostaglandin E Receptor 4 Antagonist in Cancer Immunotherapy: Mechanism of Action Frontiers in Immunology
2020, https://doi.org/10.3389/fimmu.2020.00324

 

 

 

用語説明

ペムブロリズマブ: メルク社の抗PD-1 抗体薬で、商品名はキイトルーダ®
マイクロサテライト安定性: 細胞分裂時に生じるDNA 複製ミスを修復する機能が正常な状態のこと。
奏効率: 治療効果が表れた割合のこと。
完全奏効: がんの兆候がすべてなくなること。必ずしも治癒ではない。
部分奏効: がんの状態が改善したこと。
奏効率: 完全奏効、部分奏効の患者数を治療患者総数で除して100 倍した値(%)
病勢コントロール率: 完全奏効、部分奏効、安定の患者数を治療患者総数で除して100 倍した値(%)
有害事象: 試験薬との因果関係が明らかではないものを含め、試験薬を投与された患者に生じたあらゆる好ましくない、あるいは意図しない兆候、症状、または病気のこと。
忍容性: 薬剤の副作用が投与された人にとってどの程度耐えることができるかを表す言葉。ある薬剤によって副作用が発生したとしても、患者さんが十分耐えられる程度であれば、「忍容性が高い薬剤」と判断する。

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